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インターネットの掲示板等で『チラ裏』という言葉が使われている。

皆が見ている場に載せるようなものではない独りよがりな内容の書き込みを指していて、「チラシの裏側にでも書いてろ」というレスを省略してのものだ。

 

私が子供の頃、1970年代くらいだと新聞に折り込まれているチラシには片面印刷のものが多くあり、捨てずに取っておいて絵を描いたりしたものだが、今はもう両面印刷が増えてあまり見かけなくなってしまった。

『チラ裏』という言葉が生まれたのは2000年前後だったと思うが、もうその頃には『裏が白いチラシ』はかなり少なくなっていたのに、紙という物質がかかわらないネットの世界では下らない書き込みを指し示す言葉としてそれが頻繁に使われるという状況は、興味深くあった。

絶滅寸前という存在感に魅力を感じたこともあるが、そういったこともあって、裏が白いチラシを使わずに取っておくようになった。

私は現在、公営の低所得者向け団地に住んでいる。

宅配日刊新聞は30年以上お断りしているのだが、ポストには毎日チラシが投函されていて、うちで特に多いのが不動産販売のもの。非常勤の底辺労働者である私がそのようなものを購入することなど絶対にないのだが、日々手にしているうちに、そのアナログなコミュニケーションとディスコミュニケーションっぷりに惹かれて、これももう10数年手元に保存している。

そして気付いたのだが、絶滅危惧種である片面印刷広告、たまに捕獲するチラ裏さんの圧倒的多数を占めるジャンルが、不動産販売だった。

私は、それに絵を描くことにした。

​入手することのない者が描かれている表の画像や文字をなぞるようにして……

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